わたくしごと
さあ、
ちょっとだけ体に猶予が出来たと申し上げるべきか
無理矢理にも、そう、おのれに言い聞かせていると申し上げるべきか
そのようなことは、あなた様の御心には関係ありますまい
あなた様はいつでも健やかでご親切で思うやりに溢れたお方なのですから
このような――わたくしが今、申し上げているような戯言は、本来、あなた様の耳にも脳味噌にも、差し上げるべき価値もないことで御座います
けれども、今、申し上げていることが、あなた様の、お美しい耳や脳味噌に、なんの影響も与えることなくとも、わたくしとて、どっちでも構わないので御座います
あなた様はお美しくお優しく思いやりに溢れた、大変に素晴らしいお方です。
けれども、あなた様が快くなろうがその逆だろうが、わたくしには、どうでもいいことなのでございます。
さて、ここまでお読みになって、お読みになるのをおやめになるのも、あなた様のご自由
続けて読み進められるのもご事由
けれども、ひとつだけご忠告を差し上げるならば、お読みなるとあなた様自身がお決めになられたことについて、わたくしは、その結果あなた様の御心が、どのようになろうとも、なんの責任も負うことは出来かねますのです。
何故ならば、わたくしも、あなた様も、他人同士。
分かりあうことなど、わたくしは望んでなどおりません。
ですから、もし、ここまでお読みになって、もし、あなた様自身でその責を負いかねるのとご予見されるのであるならば、続きを読み進めるのはおやめくださいませ。
さて、ご忠告はここまで。
なんのことはない、ここからは、あなた様の話は一切において、致さないということをお約束いたします。
何故ならば、わたくしは、あなた様について、何も知らず、思い入れもなく、好意も感謝も憎悪も抱いてはいないからなので御座います。
あなた様のことを全く、存じ上げていないからなので御座います。
それは、あなた様にとっても、同じことで御座いましょうね。
ですから、ここからあなた様について、罵詈雑言や酷過ぎる中傷が出てくるはずもございませんね。
あんた誰?
てな状態の、わたくしとあなた様でございますので。
先週の中頃、薬が切れました。
薬がなければ生きていけないと申し上げれば、それは大袈裟な言い方でしょうが
わたくしに残された寿命が、縮む可能性は無きにしも非ずといった具合で御座います。
あいにくと、職をカエタバカリノわたくしには、保険証というものが数日間手元になく、病院にて薬を所望致したならば、1万円近くの金が飛んでいくという事態に相なっておりました。後日保険証を提示すれば、金は帰って来るとはしってはいても、手元の現金がなくなることは、わたくしにとっては死活問題――けれども、薬がないという現実も、無論、死活問題。
どっちにしても、わたくしは、わたくしの生命がどうなるか知れない、かつまた、いつどうなってもおかしくない、この地獄のような数週間を過ごしていたのでございます。
保険証が届いたから、明日午前中に薬もらいにいけるよ~~~~~~~
こんな叫びを声には出さず、今日1日、ずっと空に放っておりました。
明日、病院へ、行く。
ただそれだけのことと、御思いになられたとしたならば、こころなしか、寂しくつらく死にたくなってしまう念いがいたしますが、それは、わたくしの中の問題であり、誰にも負わせることは不可能なことなので仕方ありません。
もし薬を手に入れたとしても
あしたは死ぬかもしれませんが、
出来る限りの努力をして、死なないよう努めたいと存じます。
あした
病院で、この希死念慮を医師に伝えねばならぬことが面倒だと思っております。
わたくしは病気ではないのです。
死を望んでしまうことが多々あるだけである、市井の者なのです。
ひとつきほど、希死念慮がやみませんが、病気だからというわけでは御座いません。
わたくしが、今もこうして、生きているのが、そのなによりの証になることで御座いましょう。
希死念慮を抱くことと、生き続ける意思をもつことは、共存が可能なので御座います。
お分かりにならなくても、一向に問題のないことで御座います。
「死にたいこと、生き続ける義務を負うこと」は、いつでも、割とワンセットであったりするので御座いますね。
死にたくても死ねない理由があるのかと言われますと、確かに、それは御座います。
もしかりに、生きつづけることが良いことであるならば、わたくしは、努力していると申し上げて差し支えないことで御座いましょう。
しあわせ あい きぼう ゆめ そのような言葉らを口にすることはおろか、意味を定義することすら、わたくしにはあまりに困難なことなので御座います。
全てが、わたくしの生命すべてが、それらに向かってはいないということだけは、はっきりと感じ取れるからで御座います。
眠い
あした薬もらいに行く、絶対