見なかったことにしても聞こえてくる

誰にも言わないが、本当は、今、死んでしまいたい。

実行する気はないが、今、消えてしまいたい

終わらない苦しみに、耐えるのが辛くなってきた。

ただただ、辛くなってきた。

 

私は、自分の中にある想像の宇宙に逃げ込み、現実世界を覗いている。

徹底した無関心で、ただ、眺めている。

感情を持つことが、即、苦しみになってしまう場所を見ている。

 

みんな、いろいろと苦しいのだろうか。

私が死んだら、私にかかる苦厄がなくなるんだろうか。

身体は、とても健やかだ。

感情は渦の中にあって、動かないみたいだ。

 

死にたい死にたいと、あまり考えない方がいいのか。

死にたいまま、生きている。

いつかは、死ぬ。

いつかは終わる。

私の大切な人達には、長生きしてほしいのに、死にたいなんて矛盾している。

 

死にたい気持ちを持ったまま、粛々と、生きていく。

 

朝が来たら、死にたい気持ちは、少しだけ和らぐし、やらなくてはいけないことがたくさんあるし。

 

やらなくてはならないことがある。

それが、消えたい気持ちを誤魔化してくれる。

 

後ろ向きとかネガティヴとか、気持ちに一応の呼び名をつけて、いっしょくたにして、ぞんざいに扱う。

悪いものとして否定する。

押しつぶそうとしたり、隠そうとする。

 

泣いている子供を押入れに隠そうとするみたいな。

泣き声は、しかし、私の耳にこびりついて離れない。

絶叫になって、すすり泣きになって、壁を乱暴に叩いて、私の横暴を非難する。

私を憎み、私を殺そうとする。

丁寧に扱ってもらえなかったことへの復讐が始まる。

 

今すぐ、病院に駆け込んで、医師に匿われるべきだろうか?

薬を服用して、感情を昏睡させるべきだろうか?

絶叫し続ける感情に対して、無視するふりをやめ、話を聞くべきだろうか?

 

 

派遣会社からの連絡がまだ来ない。

まだ来ないということは、まだ仕事がない。働けない。

派遣先に対して、いつからでも出勤出来る体制を整えておかなくては。つまり、今は動けない。

クラウドワークスを久しぶりに眺めて、出来そうな仕事を探してみた。

そんなもの、ほとんどなかった。

ついでにランサーズも眺めてみる。

 

出来そうな仕事は、やっぱり見つからない。それならそれで、仕方がない。

 

講座の申し込みをしてから、1日経った。

先方から折り返しの連絡が入った。

メールが何通も来ている。

多少、緊張しながら読んでみる。

 

f:id:saruzo:20170710123853j:image

小説を書く人志望のくせに、読書量が少ない。気持ちが不安定な時は本も読めないものだ。

本屋で目が合ったので、これを読んでいる。

 

地下室の手記新潮文庫

 

今日はこれから、特に外に出る用事もないため、講座へメールを返信したり、掃除の続きをしたり、洗濯したりするつもりだ。

食事をしていないので、空腹だ。

何か食べなければ。

スパゲティは、すぐ飽きてしまうな。

 

クラウドワークスと、ランサーズを眺める。

文章書きで、出来そうなものを探す。

もうやらない、と思っていたが、2件だけ、謎の依頼を発見した。

詳しくは書けないが、明らかに、他の仕事とは毛色が違う。

どちらも掲載されるサイトか提示されていた。

その2件に提案を出した。

 

ひとつからは返信があった。

返信への返信を出さなくてはいけない。

空腹だ。

外に出る気力がない。

 

死にたい気持ちが、まだ押入れで絶叫している。

ふすまを開けて、彼女を救出することにした。

死にたい気持ち、では長いので、呼び名を考えてみる。

自分に瓜二つだが、死ぬことしか考えていないのだ、なんて呼べばいいんだろう?

しばらく考えて、彼女を 安眠と呼ぶことにした。

英語のrestから。休息という意味や、安らかな死という意味がある。

永眠よりは、マシかなと思った。

押入れから出た安眠は、だいたい、大量の薬と飲酒を望んでいる。

安眠をある程度落ち着かせ、薬も飲酒も諦めさせているうちに、安眠がそばにいることに違和感がなくなってきた。

 

今のところ、誰にも打ち明けるつもりはないが、安眠の願望は常に私とともにあるらしい。

表面上、明るく笑ったり冗談を言うこともあるが、安眠は私の腕をしっかりと掴み、忘れさせまいとしている。

私も、忘れたいとは思わない。

この願望を抑えつけることよりも、常に共にいる方が、まともな気分がした。

 

自分で自分を偽ることくらい、苦しいことがあるだろうか。

怖い、嫌だ、嫌い、やりたくない、死にたい、死にたくない、叫びと安眠がそばにいる。

天国でも地獄でもなく、生きている者の世界がある。

二極論に引き裂くことが不可能な感情と願望が確かに存在し、私と共に生命活動を営んでいる。

心臓の脈打つ音が聞こえる。

 

消えたいと望む割に、存在感が強すぎるその様に、親しみすら覚えてしまう。

 

お昼ご飯を用意して、身体が動くなら、何通かメールを返そう。

講座で使うテキストを取り寄せよう。

恋人からもメールが来ていた。

友人からも来ていた。

死にたい気持ちを自分からは隠すことなく、淡々と行動するのだ。

 

前向きに、明るく生きなくてはいけないなんて決まりはないし、死にたいと願いながら生きたいと願うことに、矛盾は全く感じないのだ。

ただ、人にこんな話をすると、余計な心配をかけるだろうし、この感情や願望を説明できる自信もないから、誰にも言わないでいよう。

 

さあ、仕方ないから、外に出る。

安眠を連れて行く。

絶叫は止んで、静かになったけど、彼女の気持ちは変わらないみたいだ。