贅沢したから

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 贅沢をしてみたくなった

カフェでパンを食べるのだ

昨日、寝不足からくる頭痛を横にやり、バージニア・ウルフの「自分だけの部屋」を読み終えた

本をたくさん読みたくなって、樋口一葉を手に取ったらすぐに眠気にやられてしまった

寝ても寝ても眠いのだ

頭が重い

目の奥が痛い

人間として生きるならば、成長しながら生きていたい

そんな淡い感傷を抱く毎日

何をして、成長したと断言出来るのか、定かにならない

カフェの中は静かだ

他には客もいない

夜の用事に出かけるまでの一時間を無言のまま過ごす

しかし、頭の中は饒舌だ

あれを見よこれを読めそれを書けと、煩わしい程に騒ぐ

 

黒が、街に夜を塗りたくる

抵抗することなくそれを受け入れた街灯の、薄ぼんやりした光

闇の海にその光はゆらゆら映える

身体を縛る冷気がそこら中から私を見張り、無意味な緊張を強いている

こんなよくある冬に、心を傷める必要はないはずなのに、生まれついての不安癖が、静かな声で私に話しかけてくるのだ

幸せなどない

幸せなどない

もう一年も会っていない、一人の友人の顔を思い出した

いつか、田舎町の隅で会った時、私たちは嬉しく悲しく堪らず、抱き合って笑ったのだ

友人はわざわざ私を探しにきてくれたのだった

そして、私の写真を撮ったのだ

その後、友人の日記に貼り付けられた私は、笑っていた

あれも冬だった

初めて会ってから、もう随分と長い時間が過ぎた

私はあれから、何度も同じ道を行ったり来たりするばかり

成長なんて言葉とは程遠い日々をタラタラと送る

友人は、真っ直ぐと道を行く

成長とは、この人の人生のことだ

だが、誠実な友人の笑顔は、決して私を試そうとはしない

生きていてね、頼みますよ

それしか、その笑顔は言わないのだ

 

私は私の人生に試されている

 

いつか、逃げてきた仕事場で、男達が笑っていた

風俗街を茶化して、ゲラゲラと笑っていた

少し歩けば、ほんの少しだけ路地を行けば、己を売り物にする男や女の街が見つかる

どれだけ尊い為事をすれば、その街をこき下ろせるご身分となるのだろうか

 

私の思考は遠い国へ飛んだ

 

あれらの男達から、一刻も早く、決別して、その声が届かない場所に帰りたい

もしくは、あれらの男達から、永遠に、声と言葉を奪い、そのうるさい口に外すことの出来ない猿ぐつわをかけてしまいたい

悲しみを取り去りたいと思えば、どこへも行かず、誰とも会わず、考えないことが一番賢明なのだろう

しかし、そうしては生きていけない

人の言葉という槍の雨が降る場所へ、傘も盾もなく、踏み出して、生きるしかない

 

ゆっくりと、ストローでアイスコーヒーをかき混ぜている

友人は、文字が満載されたノートに、まだ何か書き込んでいるだろう

私は

私も、何か書こう

あれらの声について

冷たく、感情を抑えて、書き綴ろう